マダニの予防法 - 被害を受けないために

前回、マダニの危険性を紹介し、マダニ被害への一番の対処として病院へ行き受診するということを挙げた。マダニは感染症の媒介者である場合があるから速やかな対処が必要である。その一方で、医療機関で適切な処置が受けられた場合、重症化することは稀である。よって、適切な対処をできるようにしておくことが重要なのであるが、早期に医療機関にいけないような状態ではどうしたらよいだろうか。

まず第一に気をつけておくことは、論ずるに値しないほどに基礎的なことであるが、マダニに咬まれないようにすることである。これは本当に基本であり、平時より気をつけることでマダニに咬まれて病院にいくこともないし、不安や不快感にさいなまれることもないわけである。方法としては二つあり、物理的な方法と薬品を使う方法とがある。

物理的な予防法としては、長袖・長ズボンという服装であろう。山歩きなどでの服装として奨励される服装であるが、これは蜂やアブなどから身を守るだけでなく、マダニからも身を守ってくれる。ただし、マダニは衣服に付着して隙間から入り込もうとするからシャツの袖口は絞り、裾はズボンに入れるなどして、またズボンの裾は靴下に入れるか、しっかり絞れるようなものにしておいた方がよい。とにかく肌の露出を少なくして内部に入れないようにすることが肝心だ。また、忘れがちなのが頭と首周りである。マダニは足元周りにその多くが居るが、時に首より上にも生息している場合がある。その場合、マダニが振ってくるということになるから、帽子と首周りの防御も忘れずにしたい。理想的にはフードつきの上着が一番であるが、そういうわけに行かない場合もあるので、頭上に茂った木があったりする場合には、もしくは背丈と同じくらいの藪を行くときには帽子をかぶり、首元に気をつけよう。

薬品を持っていればそれで防御することもできる。これは、一般的な虫除けが使用できる。安価で効果が高いもので、ディート(DEET)というものがある。これは塗るタイプの虫除け薬として一般的なもので、アメリカ軍も採用したほどのしっかりとした効果がある。日本では一般的には蚊を寄せ付けないために使用することが多いが、マダニにもしっかりと効くので重装備をしたくない場合には重宝すると思う。ただし、ディートは子供に毒性があるといわれているため、よりマイルドな虫除け(ハーブの成分のものなどがある)を検討し、物理的な方法と併用することも検討した方がよいだろう。また、成人で使用している場合でも、時間がたつと効果が薄れるのでたびたび塗りなおさねば、薬を塗っていたのに咬まれてしまうということもおきかねない。そういった問題はあるが、それでもディートは強力で便利な薬品である。使える場合は有効活用しよう。

さて、それでも咬まれてしまった、もしくはそういった対処の暇もなく被害を受けてしまった場合にはどうしたらよいだろうか。こういった場合は速やかにマダニを取り除くことが必要となる。その手法や取り除いた後の対処はまた次回ということにさせて欲しい。

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森や茂みの小さいけど大きな危険 : マダニ

恐ろしい虫、と聞いて思い浮かべるものは何だろうか。毒蜘蛛、蜂、ムカデなどを思い浮かべるのが普通の人だろう。ちょっと旅なれている人だと蚊が怖いなどという人もいるかもしれない。蚊はマラリアを媒介するので恐ろしい、というわけである。それでは昔から山仕事、野良仕事をする人に聴いてみるとどうだろうか。恐らく(私の住む西日本においては)マダニが危ないというだろう。ダニは吸血動物であるから防衛のために攻撃する蜘蛛や蜂と違って積極的に危害を加えに来る。寒い時期はさほど問題にもならない生物であるが、だんだんと温かくなってくる今から警鐘を鳴らしておこうと思う。

マダニはダニであるが、家ダニと違ってマダニは動物を渡り歩いて成長する。草に隠れて小動物に付き、少し大きくなったら狐・狸などの中型の動物、その後イノシシ等の大型の動物に寄生した後に地面に落ちて落ち葉などの裏で産卵・越冬などする。

マダニの恐ろしいところは、病気の感染源であるというところである。マダニそのものは毒を持っていない。マダニは野生動物だけでなく、人間にも寄生するが、極少量の血を吸うだけでそれそのものには危険はないのである。それがゆえによくよく気をつけないとマダニに寄生されていることに気づくまでに時間がかかるのである。その間にマダニによる感染のリスクは大きく高まってしまう。感染というのは、もちろん血を吸うために皮膚を害されているため、そこから不衛生な環境であれば様々な感染リスクが生ずる。が、より恐ろしいのはマダニの持っている可能性のある病原体である。

マダニは種類や個体によりいくつかの病原体を持っている。病原体といっているのは菌とウイルスどちらもあるからである。ウイルス原因の病気としては重症熱性血小板減少症候群で嘔吐・下痢・頭痛などを起こす。細菌だとライム病とリケッチア症があり、ライム病は咬み傷あたりに発赤を生じ、全身の倦怠感・寒気・頭痛・嘔吐・発熱・関節痛などのひどい風邪のような症状を起こす。リケッチア症は種類によって症状が異なるが、日本のマダニが持つものは風疹のような症状であるようだ。どの症状も風邪の症状と間違えやすいため、マダニに咬まれたことがはっきり分からないと適切な対処が取りづらい。

日常において、マダニに咬まれるような場所、つまりヤブや森に入った後に上のような症状になった場合は病院にマダニに咬まれた可能性があることを伝えて診てもらうとよいだろう。もちろん、マダニに咬まれていることを確認した場合もすぐに医療機関に行こう。ウイルスでは対処療法しかできないが、細菌であれば適する薬が存在するので早めの受診で悪化することを防ぐことができる。

もちろんすぐに受診できる場合ばかりではない。サバイバル時、医療機関にはすぐにいけないし、大規模災害時では医薬品の不足の問題もある。そういった状態でのマダニへの対処はまた次回ということにしよう

震災特別番組などみて慌てて準備するべからず

普段からsuvtechを御覧いただいている皆様方におかれては、すでに備えをされているだろうからそのようなことはないかもしれないが、テレビ番組で災害対策番組でもみてすぐに備えねばと慌てて始めるのはやめた方がいいだろう。少なくとも一度深呼吸でもして、冷静な頭を取り返してからでも遅くない。

テレビ番組でもって特集するもので見るべきところは、生き残った人々の行動や、教訓であり、生存するための行動そのものである。先人の、しかも実績のある方法と軌跡を学ぶことで自らの心構えと知識の実用性について深く考えることができるだろう。一方で、缶詰のパンやら新しい味のアルファ化米、加熱剤などの製品なども多く紹介され、こういう時期であるからどれもこれも有用ですばらしいものに見えてくるものであるが、浮ついて購入することは避けたいものである。備える物品はそれぞれについて必要性や必然性を深く自らが理解した上で、どういった状況で活用できるかをよく考えないと、いざというときに無用の長物、資金の無駄となってしまいかねない。

まずもって生存のためには冷静な思考が重要なのであるということを今一度言っておきたい。3月11日という日は、真に生存戦略ということを考えるのには最適であるが、それゆえに心を揺さぶられ、冷静になりにくい日でもある。この日に感じたことをきっかけとして、常日頃に災害・サバイバルに意識を向けるようにし、その中で各自に最適な知識と技能、装備構成を構築していくようにしていただきたい。