ウォーキングが身を助ける

災害時、非常時、何かあったときに一番信頼できる移動手段とはなんだろうか。鉄道はレールが歪めば安全な運行は難しく、有事の際には道路は事故や道路の破損などで自動車の往来も難しくなる。二輪車でも悪路では極端に性能は悪化し、訓練を受けていなければ走行は難しいだろう。このように交通が麻痺したときに一番信頼できるのは己の足、つまり徒歩での移動である。

首都圏であれば、帰宅難民という言葉も多く聞くことがあるかと思うが、交通機関が停止したときには長距離を歩いて数時間かけて帰宅する必要がある場合もある。移動手段が他に確保できない場合においては歩くほかないのである。もちろん、軽微な交通障害であれば復旧まで待つ手もあるのであるが、避難時にはそう悠長なことを言ってはいられないし、大規模災害だと交通も復旧までかなりの時間がかかるために結局、労力をかけても徒歩で脱出するほかないとなるわけである。

したがって、歩行能力を鍛えておくことは避難能力を鍛えるということにつながるものである。あまり運動をしていないと一時間にも満たない歩行で膝に痛みをおぼえたりもするほどであり、そんな状態では適切に避難できるケースは限られてくる。どのようなところからでも安全な場所まで避難できるように、またその後の活動に支障がないように、歩きなれておくということは重要である。

その為に、日々折を見ては散歩なりウォーキングなりをすることをお勧めする。極々単純で、しかも軽度な運動であるが、自らの歩行の速度やあるいは徒歩での移動距離の限界などをある程度体感することもでき、しっかりと歩行の訓練になるものである。また、体力の増進につながることも期待できる。サバイバル時には体力は重要で、しっかりとした体ができていれば少しのことで調子を崩すこともなくなるだろう。

サバイバルは一つの道具や一つの対策だけでできるものではない。一つ一つの対策の積み重ねが生存のための土台となっているのである。ウォーキングも単なる健康法から一つ追加の価値を見出して行えば十分サバイバルの訓練となるのである。

避難所の場所を知るだけではいけない

地震などの災害時のために、どこに避難所があるか周囲の避難所の場所を確認をされている方も多いと思う。大変に良いことであると思う。災害時、より頑丈で安全な建造物に避難することは身を守る上で重要なことである。しかし、本当にその避難所は安全だろうか。また、そこは本当に妥当な避難場所であるのだろうか。

先の大震災では津波の被害が甚大であった。低地では、いや、そこそこの高さでもかなりの被害を受けたのである。その中には避難所として設定されていた施設もあった。場合によっては数階建ての鉄筋コンクリートの建造物でさえ内部が全て洗い流されたものもあるのである。台風などでの避難には十分でも、大地震や津波、大洪水に適する避難所であるとは限らない。

避難所になる様な場所では、多数の人が集合することができる公共施設であるというのがまず第一に考えられていて、他では耐震構造であるかは見られるであろうが、もっと大きな視点からの耐災害性能はあまり省みられることはない。川が氾濫すると飲み込まれるような場所であったり、地すべりで生き埋めになる可能性のある立地であったりすることもありうるのである。地震の場合を考えてみると、揺れで不安定になっている斜面や崖が崩れることもあるし、大きな地震であればダムの決壊も可能性が無いわけではないので避難所が水に飲まれやすい位置にないか、安定した土地にあるかという点は確認しておきたいところである。

また、その避難所への経路も検討しておかなくてはならない。避難所はどういったところを通っていくのであろうか。その経路はできるだけ短くしたいが、また同時に安全で確実であるということが求められる。

実際に通過するその場所が災害時にどういった状況になりうるかを想定しておく必要がある。橋を渡るか、高架は通るか、近くに川はあるか、ガソリンスタンドなど危険物を扱うところは、もしくは大勢の人がいる場所を通るのか。

橋や高架は地震であれば崩壊して通行できない可能性を考えておかねばならない。また大雨のときは橋の通行は危険なこともある。災害時に火災が併発している場合は可燃物を扱うガソリンスタンド周辺は危険を避けるため迂回した方がよいかもしれない。繁華街等の人が多いところでは人々の混乱に巻き込まれて身動きが取れなくなる可能性もある。他にも斜面が崩れて道路が通行不可になったり、トンネルが通行するには危険になったり、その場に応じた想定が必要となる。

1つの避難所だけを調べて満足してしまうのではなく、より安全を確実にするために、いくつかの迂回路、また第二避難所などを探しておいて状況に応じた変更ができるようにしておくとより安全に避難することが可能になるであろう。

ナビゲーション:位置を知るということ

移動時に自らの居場所を把握できていなければ、すなわち遭難してしまう。サバイバルの知識があったとしても、無計画な移動はそれだけで危険であり、体力を消耗し、徒にリスクを増大させるだけである。

現代においては都市部やそれなりに建築物がある場所であれば、災害時であっても深く森や山に入るなどしなければ遭難をすることはないかもしれない。が、災害時においては整備された道路や、分かりやすい道のりが破壊、寸断されて利用できず、迂回を余儀なくされることもある。その場合にはやむを得ず山野、森林に分け入って進むことになる。

そういったときに、自らの位置を特定することができる、最低でも元の位置まで戻れるようにできれば遭難の危険を大きく減らすことができる。

基本的に必要なのはコンパスである。コンパスは南北を指し示し、自分がどの方角に歩いているかを知ることができる。そして、足が役に立つ。これは徒歩での移動だからというわけでなく、歩数が重要ということである。自分の歩幅を知っていれば歩数のカウントをすれば移動した距離を概算することができる。一歩は(歩くときに片足を出したときを一歩とすると)おおよそ1m程度である。

進んだ方向と距離が分かればそれを全て記録しておけば始めの位置からどこに移動したかがわかる。メモ帳か何かに、進んだ方向と距離の縮小図を書き込めば分かりやすく移動の経路と現在地を見ることができるだろう。ただし、そういった作図をするには細かい目盛のついたコンパスとものさしが必要である。オリエンテーリングなどに利用される専用のコンパスがあるから、紙とペンを用意するのと同時にそういったものを用意するといいだろう。

また、簡易的にはコンパスと歩数のカウントだけでもある程度居場所を見失わないようにできる。

例えば東から西に移動しているとき、道のある場所が崩落し通行できない場合、少し北側を通って迂回することを考える。そのとき、西北西に300歩進んだ後に西南西に300歩進めば元の場所から西にまっすぐ移動したのと同じ場所に出るだろう。単純であるが、このような行動の積み重ねで道を見失わず移動が可能になる。

災害時のみならず、山や森に入る場合には計画的に移動し、遭難事故のないように気をつけたいところである。

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