サバイバリストは紐を備えるべきである

日常生活において、ロープを使うということはさほど無いと思う。自動車の牽引や、運動会の綱引き、イベントのテント張り・・・街中ではこの程度だろうか。裁縫をされる方なら糸にはよく触れるだろうか。そして、紐くらいのサイズだとどうだろう。新聞紙や雑誌を束ねるときにビニール紐を使い、家庭菜園でも紐を使うだろうか。料理でタコ糸も使うかもしれない。

日常生活で紐やロープの類は所々で見られるにもかかわらず、あまり主役的には見られないことが多く、さほど省みられることは無い。そして、紐や糸やロープ類は災害対策のときに一般的にはさほど重視されることは無いだろうと思われる。その一方で、アウトドアのたとえばキャンプなどではタープやテントを張るときなど様々なシーンで利用されるものでもある。

実のところはサバイバルにおいてはアウトドア的なものが重要であることが多く、これはロープなどについてもそうで、サバイバルにおいて、特に紐の重要性は高い。

紐は木を組んで色々な物を作ったり、何かを束ねて(たいていの場合、薪や柴などの燃料)運搬したりすることに使える。また、木の間に紐を張ってそこにサバイバルシート等の防水性シートをかければタープ・テントとしての利用もできる。他にも、弓錐式発火法での弓の弦として使用することもできる。釣り糸にも、罠のロープにも、編んでネットにもできる。利用法はアイデアしだいでいくらでもあるが、とにかく紐が無ければ始まらない。

サバイバル中にちゃんとした紐を得るというのは難しい場合もある。ビニール紐や麻紐などは安価で大量に販売されているが、少し文明圏を離れると、紐として使えるような物はつる性の植物か、繊維の強靭な草とかそのあたりになるだろう。そういった植物を直接使う方法は扱いにくい上に強度的に問題があったりもする。

そのような植物類から(実際に糸を作るようにして)よりをかけて紐を作るという方法もあるし、そのようにして作った紐は強度も上がるが、ずいぶんな手間が必要になってくる。したがって紐は大量でなくてもよいから備えるべき物資・装備であるといえる。

非常時の応用として靴紐を使ったり、衣類の一部を裂いて紐として利用したりするような手法もあるが、それらについては機動力や衣類の防御能力が低下するわけであるから、できるだけ控えたほうがよい。紐がどうしても必要だがその場にないという場合のみ、そうした流用をするとよいだろう。

鍋が必要なときそこにあるとは限らない

いままで、水に関して述べるときに、安全を確保するための原始的方法として、煮沸するという方法を挙げてきた。しかしながら、煮沸するための道具というのはそんなに多くあるものではない。

水を沸かすというときに、おおよその方がヤカン(ケトル)を思い浮かべるだろう。一方で、キッチンを見回してみると、電気ケトルや電気ポットが多く普及しており、ヤカンが無い家庭も多く見受けられるようになった。それに湯を沸かす専用器具のヤカンはあって1つがいいところだ。

べつに、ヤカンで無ければ湯を沸かせられないわけではない。他にも、通常の鍋であれば湯を沸かせるし、土鍋や中華鍋も湯沸しに使える。また、金属製のカップでも不可能ではない。が、いったんキッチンから出ると、湯沸しに使えそうな物品は消えうせてしまう。

昔であればアルミの弁当箱とかブリキの水筒とかがよくあったのだが、最近は弁当箱も水筒もプラスチックのものが多い。水筒は金属製の魔法瓶型のものも多いから火のなかにおくこともできるが、断熱がよいので湯沸しにはむかない。(ついでに言うと、パッキン等が熱でだめになる)

それに、こういう家庭にある鍋類がどんなときでも使えると思っていると足元をすくわれかねない。家屋の倒壊があればすぐには取り出せないし、瓦礫の下から引っ張り出す間もなく水にさらわれてしまうことだってある。火災の高温にさらされ続ければ金属製品であっても破壊されることがあるし、なんら破壊が無くとも寄り付けない状況が発生しうることは、我々は思い知ったはずだ。

つまるところ、脱出装備に鍋を入れておけということになる。鍋があれば、湯を沸かすだけでなく、調理もできるようになる。そうなると、湯を沸かして調理することを前提とした装備の組み方も可能になる。水だけで食べられるようになると謳った非常食なども、湯を使えばよりおいしく食べられたりするし、そもそも湯が得られるならインスタント麺や乾麺などを非常食として使うことができる。あとは、米が炊ける。ジップロックに米を入れておけば白米の飯が食べられるというのは大きい。温かい食事というのはそれだけで気分を向上させるといわれるし、肉体的にも冷たい食事より温かい食事のほうが負担が少ない。

なんにせよ、鍋が1つあるだけで、行動の選択肢が大きく広がるのである。

備える鍋としては、アウトドア用品のクッキングセットがいいだろう。そもそもアウトドア、特に登山用品として設計された鍋は装備の容積と重量の制限があるために、大変コンパクトにまとまり、重量も軽いことが多い(ダッチオーブンなんかはすごく重いが、あれは背負って行動するものではない)。また、それぞれの好みでスタンダードな鍋らしい鍋ではなく、飯ごうや特殊な形の製品を検討するのもよいだろう。

選び方はそれぞれの好みと重量に応じてということになるが、何度も何度も湯を沸かすのは大変だから、1リットル程度は容量のあるものを選ぶとよい。コンパクトな登山用として用いられるような鍋は大変重量が軽く全体の重量をあまり増やさないのでいいかとおもう。

細かい話になるのだが、軽い鍋を選んだときに材質はチタンとアルミニウムがあるが、値段が圧倒的に安いのでアルミ素材のものを選びたくなるのが心情だと思う。ただし、アルミニウムはアルカリに弱い。サバイバル状況下においては焚き火で湯沸し等すると思われるが、その灰によって(灰はアルカリ性だ)アルミニウムは腐食をうけてしまう。最近は表面のコーティング等もあるが、扱いによっては腐食によって穴が開くことも考えられるので、装備が使用不能になったときの対処に自信が無ければアルカリに強いチタン素材のものを使用したほうが賢明だろう。

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サバイバルとナイフ

サバイバルにおいてナイフ、というか刃物の存在は重要である。木を削り道具を作るのに必要であるし、そこまでの工作をしなくともロープを切ったり火をおこしたりする際に便利であるし、持っている物資のパッケージを開けたり料理をするシーンもあるかもしれない。刃物というのは現代においてそれぞれの用途専用のものがあふれているがゆえに気づきにくいが、ないと存外に困るものである。

サバイバルでナイフ、というとたいていの人が大きないわゆるサバイバルナイフというものを想像されるかと思う。実際、森林地帯や草原などのど真ん中でのサバイバルであればそういうナイフは、つまるところ鉈のような使い方ができるので重宝する。また、木を切り倒して薪割りをするのにも使ったりするようなのがそういった一般にイメージされるサバイバルのナイフの用途である。一般に、映画などのイメージで、サバイバルナイフで戦うようなものがあるが、ナイフはあまり武器として有用でなくそういった使い方はサバイバリストはほとんどしない。

一方で、そこまでのナイフが無くともサバイバルは可能である。大振りのサバイバルナイフは場合によっては荷物になる、携帯に不便な面もあるために小型のナイフが好まれるシチュエーションもあるのである。小型のスイスアーミーナイフ程度のものがよく使われるように思われる。

しかしながら、こういったナイフは小型大型を問わず日常で持ち歩くのには支障があることもある。都会にあってはこういったものを持っていると没収されることがよくあるそうである。東日本大震災時においても、被災後の瓦礫撤去ボランティアがツールナイフ(7得ナイフの類)を便利使いしていたが、没収されてしまった。防災で自治体が勧める用意品にこういうツールナイフが含まれているにもかかわらず警察は取上げてまわることがあるということを覚えておかなくてはならない。

上記の理由、また航空機などで刃物を携帯できないとき、装備を失ってしまったときなどに災難があっても、知識があれば乗り切ることもできる。缶詰の蓋や鉄板などからナイフを作ることができるし、もっと原始的な石からナイフを作るようなことだって可能なのである。

なんにせよ、サバイバルの基本はその場にあるものを使うことである。生存に適切な行動が取れればナイフを持つことにこだわる必要はない。しかし、ナイフはその生存のための工夫、その道具の工作に使う第一の工具であり、それを持っていることは生存を確立するための時間を大幅に短縮することにつながるのである。