ラーパナントゥリ - フィンランドの働く男たちの火

今までに何度かスウェディッシュトーチを紹介しているが、それはもともとはフィンランドのものであるといわれる。広く知られている名前がスウェディッシュトーチであるから私もそう呼んでいるが、フィンニッシュトーチ(あるいはフィニッシュトーチか)と呼ぶべきとの話もあったりする(ただ、語感があまりよくないから広まらないかもしれない)。

しかし、確かにこの種の焚き火はフィンランドから来たに違いない。フィンランドの言葉でラーパナントゥリ (Raappanan Tuli) と呼ばれる火の焚き方がある。山仕事や野外の仕事をするフィンランドの男たちが使ってきた伝統的なやり方だそうであるが、これはまさにスウェディッシュトーチの原型といえる方法である。

切り出した丸太を半分に割り、割れ目の部分を斧でささくれ立たせる(火がつきやすくなる)そしてこの割れた部分の間を適切な間隔にしてそこで火をおこす。実に豪快なそれでいて実用的な炎がこれだけで得られる。道具も斧だけでやってしまう。まさに男たちの炎だ。

長時間にわたり逞しい炎を上げるこの手のトーチは極寒の地ならではの知恵の結晶のように感じ入るところである。

小さなナイフしかないとき薪を割る方法

焚き火をうまくするには薪の準備に気をつかわなければならない。細い焚きつけや火付きの良い細めの薪を用意することは焚き火の成功に大いに貢献するだろう。

そのため、薪を小さくするのに薪割りをする。それに一番いいのはやはりその為に作られた斧であるが、ある程度のナイフの大きさがあれば木を割って薪をつくることはさほど難しくはない。バトニングというナイフの背を木の棒でたたく方法によりナイフを木に押し込んでいけば割ることができる。

しかしながら、携帯性を良くするためかサバイバルキットなどには極々小さいナイフしか入っていないことも多い。また日本のナイフ事情を見ても大振りのナイフを備えておくというのは難しいといわざるを得ない。そうした状況から、小さなナイフしかない場合の薪割りについても考えておかなければならない。

太い木を割るときに、斧でも難しいときがあるが、そういうときに使われる道具が存在する。「楔(クサビ)」である。楔形文字などで聞いたことがあるだろうあの楔である。クサビは木に打ち込んで割れ目を作り、押し広げて割っていく道具である。たいていの場合ハンマーを使って打ち込まれる。

しかし、その素材は鋼鉄のものもあるが、プラスチックのものもあり、隙間を押し広げられるのなら何でもよいように思われる。と、いうことはクサビ形の木片であってもクサビとして機能するのであり、それによって木を割ることができるのである。

上の動画では、始めにナイフを使い小さいクサビ型の木片を割ってとり、割ろうとする木にナイフで切れ込みを入れて、そこに木の棒を使いクサビを打ち込んでいる。

ナイフは始めのクサビ作りとクサビの入る切れ目を作るためだけに使われる。途中動画ではクサビの上からナイフを叩き込むシーンがあるが、これはナイフを当て板にしてクサビを押し込んでいるだけで、他のもの(木片とか)でもクサビを押し入れることができればなんでもよい。

また、クサビが始めから長ければナイフで押し込む必要はない。

この動画ではまた、クサビを元からある割れ目に差し込んで木を割っている。ナイフを使うのは補助だというのが良くわかる。

クサビというのは木を割るということには本当に多大な効力を発揮する。下の動画では大きな丸太を2つのクサビを使って真っ二つに割っている。鋼鉄のクサビであるから、直接そのまま打ち込んでいるが、基本的にやっていることは同じである。勝手が少し違うであろうが、木のクサビでも原理上可能な仕事である。

薪割りとナイフ

焚き火をするとき、燃やす木は焚きつけと呼ばれる細い木材から燃やし始める。焚きつけに十分火が回ったのちに細めの薪に火がつきはじめ、だんだんと太い薪に火がつくようになる。これが基本的な焚き火の順序である。

したがって焚き火の際は細い木の枝なり木っ端なりを入手し、細めの薪を用意するべきなのであるが、場合によっては太い大振りの木材しか手に入らないことだってある。こういうときどうするのか。

一般的に大きな木材を燃料にするときには薪割りをする。斧を振りかぶり丸太に振り下ろすようなイメージのあれだ。だが、サバイバル状況下、またアウトドア活動中において、斧を所持していない場合も多くあるだろう。そういったときはどうするのか。

ナイフしかないときに、大きな木材に立ち向かわなければならないときの技法に「バトニング」というのがある。バトンingでバトニングである。これは、ナイフを木材に当てて、そのナイフの背を木の棒でたたいてナイフを押し込むという技術である。

バトニングを使えばナイフだけでも結構な太さの木を割ることができ、さらに小さく割ると、あとはナイフを刺してこじるだけで割れるようになる。

また、薪とするためだけでなく、こうして木を割っていくことで板や棒を作ることができる。これにより摩擦式の発火法に使う板や棒を成型するのもより簡単になるだろう。