非常時にはなんでも不足する。流通が途絶えると食料・飲料・電池類のみならず消耗品の類は全て不足するといっていいだろう。そういうときのために備蓄をするのではあるけれども、何でもかんでも備蓄するのではスペースをとって仕方が無い。備蓄用のスペースも金銭も限りある資源であるからより生命に直結する食料・飲料に多くを費やしたいところである。そのため、生活の質を大きく落とさないところでは生活物資を節約するということも重要なのである。消費する物資の量を減らすことで備蓄する量も少なくてすみ、リソースをより重要なことに利用することが出来る。
さほど生命・健康に直結しない消耗品というのはそこそこあって、化粧品だとかリンス・トリートメントの類(シャンプー・石鹸は衛生的に重要)、そして剃刀なんかもそうである。それぞれは身だしなみを調えて対人関係を円滑に行かせるために有効であるから完全になくしてしまうことはよくないにしても、少量ですむ方法があるならばそれにこしたことはない。
特に上記の中で節約しやすいのは剃刀であろうか。剃刀は金属製であって、化粧品などと違って使用するだけで消費してしまうものとは少し異なる。最近の剃刀は多くが使い捨てのもので、切れ味が弱ると捨ててしまうために消耗品の扱いであるが、そもそもは一本の刃物であり耐久消費財の類であった。すなわち適切なメンテナンスを行えば使い続けることができる道具なわけである。もちろん本格的な一枚の刃物の剃刀を使うのは現代的なT字複数刃の剃刀になれた者には危険であるし、私もお勧めしない。それよりはT字の剃刀を長く使うためのテクニックがあるのでこれを紹介したい。
ジーンズで刃を剃るのとは逆方向に滑らせて砥ぐという簡単な方法である。もちろん開封したての鋭い切れ味というわけにはいかないが、しかしながら実感できるほどに切れ味は回復する。これは剃刀の砥ぎ方で使う皮砥のようなものである。皮砥は研磨剤をつけた皮の帯で剃刀を砥ぐのであるが、仕上げでは研磨剤無しの皮で刃を整える。ジーンズの布であればある程度の砥ぎの効果と刃を整える効果がみこめるのかもしれない。
何もない場合でも皮膚で研ぐというか、刃を整えるということも出来る。いまいち切れがよろしくない剃刀を使っているとき、肌を切らないように慎重にする必要はあるが、自分の皮膚を皮砥のようにつかって刃を整えると切れるようになった体験をしたことがある。剃刀は鋭い刃がとても繊細で切れ味が変わり易い。繊細であるがゆえにこんな突拍子も無いことでも効果があったりするのである。私も初めは半信半疑であったが、やってみるとなかなか面白いものであるから、だまされたと思って少しばかり試してみてはどうだろうか。