マダニに咬まれたときの手当て - 病院に行けないときどうするか

小さく危険で厄介なマダニ、その最も重要な対処はまず咬まれないようにすることで、その方法については前回紹介した。しかし、不幸にも対策が及ばずに咬まれてしまったらどうしたらよいだろうか。

何の問題もなく文明圏に居れば医療機関に行き、医師の診察をうけるのがよいが、災害時・人里離れている時・その他サバイバル時には自分で対処するしかない。マダニへの対処は時間との勝負でもある。マダニは咬みつくとそのまましばらく張り付いて血を吸い続ける。そして、そのとき、直ちに処置しないと感染症の確率が高まるのである。したがって、速やかな受診が期待できないときは自力での処置が必要不可欠なのである。

処置の基本的なところは、マダニを除去することである。マダニが病原体(細菌やウイルス)を持っている場合、24時間もすればマダニが血を吸うために刺した針から体内へ病原体が侵入する。逆に言えば早期にマダニを除去できれば感染の可能性を減らすことが出来る。

ただし、除去には技術が必要である。精密につかむことが出来る先の細いピンセットを使い、マダニの針のなるべく近く、頭の部分をつかみ、まっすぐにゆっくりと引き上げなければならない。例えばマダニの腹をつぶしてしまうと、体液が針を通じて体内に入ってしまうし、まっすぐに丁寧に引き抜かなければ針が体内に残ってしまい、こうしたことが起きてしまうと感染の可能性が大きくなってしまうからである。

英語の解説であるが分かりやすい図解の動画があったので上に示しておく。手法を知っておけば道具を用意しておけば不測のときでも間違った対処をしなくてすむだろう。

また、専用の道具も開発・販売されている。きっちり備えられるならばその方が良いかもしれない。

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さて、マダニをきっちりと除去することが出来れば感染症の確率は大きく低下するが、不幸にもマダニに咬まれていることに気づくのに遅れてしまったり、対処に失敗してしまった場合で、感染症にかかってしまった場合、医療機関にかかるほかないだろうか。実は一つだけ方法がある。薬を摂取し細菌を撃滅する方法である。だが、これは日本では有効な薬が市販されていないこともあって一般的とは言えない。

薬自体は、医師に相談して処方してもらえることもあるかもしれないが、しかし有事の備えとして処方してもらうのは難しいだろう。確実に手に入れたい場合は個人輸入という手がある。これは奨励するには少し弊害もあるので、詳しい方法については紹介を避けるが、おおよそ検索すると出てくるので注意深く行って欲しい。マダニにが持つリケッチアやライム病、日本紅斑熱といった感染症に効く薬はテトラサイクリンやドキシサイクリンが代表例で挙げられるから、もし手間をかけてでも備えようとするならそれらの薬を探すと良いだろう。

マダニは動物が居るところなら大抵のところに居ると思ってよい。万が一のときに手遅れにならないよう、予防から治療まできっちりとした対策を頭にいれておけば、自分のみならず家族・友人の命も守ることが出来るだろう。

マダニの予防法 - 被害を受けないために

前回、マダニの危険性を紹介し、マダニ被害への一番の対処として病院へ行き受診するということを挙げた。マダニは感染症の媒介者である場合があるから速やかな対処が必要である。その一方で、医療機関で適切な処置が受けられた場合、重症化することは稀である。よって、適切な対処をできるようにしておくことが重要なのであるが、早期に医療機関にいけないような状態ではどうしたらよいだろうか。

まず第一に気をつけておくことは、論ずるに値しないほどに基礎的なことであるが、マダニに咬まれないようにすることである。これは本当に基本であり、平時より気をつけることでマダニに咬まれて病院にいくこともないし、不安や不快感にさいなまれることもないわけである。方法としては二つあり、物理的な方法と薬品を使う方法とがある。

物理的な予防法としては、長袖・長ズボンという服装であろう。山歩きなどでの服装として奨励される服装であるが、これは蜂やアブなどから身を守るだけでなく、マダニからも身を守ってくれる。ただし、マダニは衣服に付着して隙間から入り込もうとするからシャツの袖口は絞り、裾はズボンに入れるなどして、またズボンの裾は靴下に入れるか、しっかり絞れるようなものにしておいた方がよい。とにかく肌の露出を少なくして内部に入れないようにすることが肝心だ。また、忘れがちなのが頭と首周りである。マダニは足元周りにその多くが居るが、時に首より上にも生息している場合がある。その場合、マダニが振ってくるということになるから、帽子と首周りの防御も忘れずにしたい。理想的にはフードつきの上着が一番であるが、そういうわけに行かない場合もあるので、頭上に茂った木があったりする場合には、もしくは背丈と同じくらいの藪を行くときには帽子をかぶり、首元に気をつけよう。

薬品を持っていればそれで防御することもできる。これは、一般的な虫除けが使用できる。安価で効果が高いもので、ディート(DEET)というものがある。これは塗るタイプの虫除け薬として一般的なもので、アメリカ軍も採用したほどのしっかりとした効果がある。日本では一般的には蚊を寄せ付けないために使用することが多いが、マダニにもしっかりと効くので重装備をしたくない場合には重宝すると思う。ただし、ディートは子供に毒性があるといわれているため、よりマイルドな虫除け(ハーブの成分のものなどがある)を検討し、物理的な方法と併用することも検討した方がよいだろう。また、成人で使用している場合でも、時間がたつと効果が薄れるのでたびたび塗りなおさねば、薬を塗っていたのに咬まれてしまうということもおきかねない。そういった問題はあるが、それでもディートは強力で便利な薬品である。使える場合は有効活用しよう。

さて、それでも咬まれてしまった、もしくはそういった対処の暇もなく被害を受けてしまった場合にはどうしたらよいだろうか。こういった場合は速やかにマダニを取り除くことが必要となる。その手法や取り除いた後の対処はまた次回ということにさせて欲しい。

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森や茂みの小さいけど大きな危険 : マダニ

恐ろしい虫、と聞いて思い浮かべるものは何だろうか。毒蜘蛛、蜂、ムカデなどを思い浮かべるのが普通の人だろう。ちょっと旅なれている人だと蚊が怖いなどという人もいるかもしれない。蚊はマラリアを媒介するので恐ろしい、というわけである。それでは昔から山仕事、野良仕事をする人に聴いてみるとどうだろうか。恐らく(私の住む西日本においては)マダニが危ないというだろう。ダニは吸血動物であるから防衛のために攻撃する蜘蛛や蜂と違って積極的に危害を加えに来る。寒い時期はさほど問題にもならない生物であるが、だんだんと温かくなってくる今から警鐘を鳴らしておこうと思う。

マダニはダニであるが、家ダニと違ってマダニは動物を渡り歩いて成長する。草に隠れて小動物に付き、少し大きくなったら狐・狸などの中型の動物、その後イノシシ等の大型の動物に寄生した後に地面に落ちて落ち葉などの裏で産卵・越冬などする。

マダニの恐ろしいところは、病気の感染源であるというところである。マダニそのものは毒を持っていない。マダニは野生動物だけでなく、人間にも寄生するが、極少量の血を吸うだけでそれそのものには危険はないのである。それがゆえによくよく気をつけないとマダニに寄生されていることに気づくまでに時間がかかるのである。その間にマダニによる感染のリスクは大きく高まってしまう。感染というのは、もちろん血を吸うために皮膚を害されているため、そこから不衛生な環境であれば様々な感染リスクが生ずる。が、より恐ろしいのはマダニの持っている可能性のある病原体である。

マダニは種類や個体によりいくつかの病原体を持っている。病原体といっているのは菌とウイルスどちらもあるからである。ウイルス原因の病気としては重症熱性血小板減少症候群で嘔吐・下痢・頭痛などを起こす。細菌だとライム病とリケッチア症があり、ライム病は咬み傷あたりに発赤を生じ、全身の倦怠感・寒気・頭痛・嘔吐・発熱・関節痛などのひどい風邪のような症状を起こす。リケッチア症は種類によって症状が異なるが、日本のマダニが持つものは風疹のような症状であるようだ。どの症状も風邪の症状と間違えやすいため、マダニに咬まれたことがはっきり分からないと適切な対処が取りづらい。

日常において、マダニに咬まれるような場所、つまりヤブや森に入った後に上のような症状になった場合は病院にマダニに咬まれた可能性があることを伝えて診てもらうとよいだろう。もちろん、マダニに咬まれていることを確認した場合もすぐに医療機関に行こう。ウイルスでは対処療法しかできないが、細菌であれば適する薬が存在するので早めの受診で悪化することを防ぐことができる。

もちろんすぐに受診できる場合ばかりではない。サバイバル時、医療機関にはすぐにいけないし、大規模災害時では医薬品の不足の問題もある。そういった状態でのマダニへの対処はまた次回ということにしよう