正月には餅を食べる機会が多い。方々で餅がふるまわれる。そして多くの誤嚥事故、つまり餅をのどにつめる事故が発生している。餅のシーズンはおおよそ過ぎていまさらだが、その対処法を記憶の薄れないうちに覚えておこう。また、餅だけでなく色々なものを誤嚥する可能性はあるから損にはならないと思う。
餅をのどにつめる事故があったとき、過去に家庭にあった掃除機を使って餅を吸出して難を逃れたという事例もあるが、そう都合よくそういったものが存在するかは分からない。また、軽度の場合ではそういった対処が悪化を招くこともある。
まず確認するべきことは、呼吸が少なからずできているかどうかである。完全に詰まっていない場合は自分で咳をするなどして排出できる可能性があり、異物を内部に押し込むリスクのある方法は避けるべきである。ヒューヒューと細くでも呼吸ができているのかどうか、また咳ができるかどうかを確認する。呼吸が完全に停止している場合には早急に異物を取り除く必要がある。可能であれば救急に連絡し、また直接異物をつかんで取り出したり、前述の掃除機で取り出すような方法を使ったり(ただし掃除機を使う方法は専用の器具を用意して置かないと極浅いところに異物がある場合でないと使えない)するという方法があるが、器具がなく、また見えるところに異物がなければ直接取り出す方法は使えない。他には特殊な姿勢で腹部を圧迫したり(ハイムリック法)横に寝かせて背中を叩いたりする方法(背部叩打法)があるが、きっちりと方法を習得していないと内臓をいためたり危険な場合があるから、有事の際に実践する気のある方は、救急救命の講座などをしているところに問い合わせてこういった方法の講習に参加すると良いだろう。
一方で、咳き込める状態であればそこまでの対処をせずとも回復できる場合もある。誤嚥などで気道に異物が入った場合などにおいては、咳をして排出できる健康状態であれば咳により排出しやすくする方法を取ったほうがリスクが少ないだろう。咳を遠慮なくできる状況にして、また咳により排出しやすい姿勢にする必要がある。個人差や誤嚥したものにより変化する可能性があり、個人的な経験で申し訳ないが、腰を曲げ、口をへそよりも低くすると幾分かは楽に出る。周りからは咳をして出すことを奨励してやるのがよいだろう。一般的に行われる、背中を叩いたり、水を飲ませたりする行為はより異物を内部に押し込む可能性や更なる窒息を招く可能性もあり避けるべきであろう。
さて、今まで物が詰まったあとの話をしてきたが、そもそもは予防のできるものであることを覚えておこう。食物の誤嚥であれば、よく噛み、ゆっくり飲み込むことで誤嚥する可能性はかなり低くなる。他にも非食物の飲み込み事故などは飲み込みそうなものを置かないなど気を配ることで予防できるだろう。老人や子供などは特にこういった事故を起こしやすい。予防に勝る対処はないのである。事後の対処をしっかりとしておき、また予防を心がけることで危険を確実に遠ざけることができるはずだ。