携行に便利なチョコレート - 夏にもチョコレート

非常時の携行食として菓子類が有効である。効率よくカロリーを補給し、気分を向上させることが出来る。小型軽量ながら重量比のカロリーが大きいものが多いことも有利に働く。そして、その菓子類の中でも非常用菓子の王というべき存在がチョコレートである。

チョコレートは軍に早くから目をつけられた食品の一つである。風味がよく甘みが豊富で油脂を多く含むためにカロリーが高く、同時に保存性が高い。油脂が多くを占めている食品は他で言えばぺミカンのように保存食として扱われるくらい保存はよい。そういった観点から、パイロットの非常食や兵士の携行食として配給される例は多い。

同時にチョコレートには薬効がある。食品に薬効というとおかしな感じだ(そしてたぶん法的には正しくない)が、生薬的な作用は色々な食品にある。お茶には眠気を覚ます作用があるし、麦茶には熱を放散させる作用がある。健康効果とも言われるこれらの効果は薬として精製されたものよりは弱いが、確かに効果があると確かめられている物がある。チョコレートでは血液循環系の作用がそうである。テオブロミンと呼ばれる物質が強心作用を持ち、また含まれるポリフェノール類が血管の健康に良い影響があるようである。サバイバル時にはこれらの作用は気休め程度だとしても重要である。

さて、そういうすばらしいチョコレートを常備するというのは言うは易いが行うのは少しばかり問題がある。チョコレートは油脂の塊のようなものである。すなわち熱で融けるのである。通常の市販のチョコレートは手で持っているだけでも融けて崩れてしまう。ポケットにいれては悲惨なことになるし、夏ではチョコレート製品の販売ラインナップが少なくなるくらいには扱いが難しくなる。というわけで、常備しようとするならば融けてだめになり難いものを選ぶ必要がある。そういった製品は探すと意外とあるもので、そういったところからもチョコレートの人気と重要性を知ることが出来る。

最近では焼きチョコなるものもあるが、基本は融け難く調整されたチョコ、もしくは融けて問題ない形態にされたものである。融け難くされたチョコは古くはハーシーがアメリカ軍に依頼されて作ったものであったと記憶しているが、現在ではいくつかの企業が非常用チョコレートなどで販売している。また、解けて問題ないチョコレートは、言ってしまうとM&M’sである。砂糖菓子でコーティングされ、融け難い、また融けたとしてもくっつかないというチョコレートである。日本ではマーブルチョコレートなどの方が馴染み深く入手しやすいかもしれない。

私がお勧めなのはM&M’sのピーナッツが入っている物である。私がピーナッツチョコレートが好きなのもあるが、M&M’sのチョコのなかではわりと癖が少ないと感じたからである。小袋のものが携帯に便利で、いろんなところに入れておける。

涼しい時期には板チョコの一枚でもいれておけばいいのかもしれないが、暑い夏にはそうも行かない。おいしいものを食べられるというのは意外と重要なので、好みの味の菓子をいつでも食べられるように、少し探してみるのもいいかもしれない。

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[やってはいけないこと] サバイバルでは危険な脳漿なめし

サバイバルにおいては被服については食料より緊急度が低いのであまり触れていなかった革のなめしについて、日本の知識環境では危険な部分があると感じたので今回は少しそのあたりについて解説したいと思う。

インターネットでなめしについて検索する人々に知識の偏りが生じている可能性に気づいたのはとあるweb小説を目にしたのがきっかけだった。その話の中では主人公が狩猟をし、その皮の活用でなめしをしようとしたとき、なめし用の薬が無いので自然物を使ったなめしとして脳漿なめしを検討していた。そこで私は、「はて、自然物でのなめしならまずは樹皮なめしでは?」と思ったのである。

改めてなめしについて検索をしてみると、「なめし 方法」などのワードで上位に脳漿なめしの実践を行っているページが見られた。これは私も以前に見た記憶があり、恐らくなめしについて調べている人の結構な人数が見ている物と思われる。上述の小説ももしかするとそういった背景があってのものかもしれない。このページは極めて実践的で、また詳細な記述が大変有用なものである。脳漿なめしという方法はかなり古くからの方法であり技術伝承の意味、また最終製品の質からも重要な方法であるということにはなんら異論の無いところである。ただし、脳漿なめしはメジャーな方法ではない。メジャーでない技術にはメジャーになれない何らかの原因がある。

そういった原因の多くは経済的なものである。脳漿なめしも脳漿の性質が一定しないとか脳漿を確保するのが面倒、費用がかさむなどの問題がある。そして、脳漿なめしにはもう一つ大きな問題がある。腐敗しやすい脳漿を利用するという根本的問題である。脳漿はつまりぐちゃぐちゃの脳そのものであるが、これは栄養分と水分が十分にあり、容易に微生物の温床となる。脳を栄養とする菌なりバクテリアというのはすなわち生きている生物の脳も食べるということである。そういったものが大量に繁殖する脳漿を扱うのは大変危険である。警鐘をならす方もいる(脳漿鞣しでおこる健康被害 : オグララ工房雑記)が、なめしにかかわらず方法について解説しているときにはあまりそういった危険について話が向くことは少ないように思われる。

現代では抗生物質の発達と医療の整備が進んだこともあって、そうした方法で事故が起きても死亡することは極少なくなったであろうが、サバイバル時や文明崩壊後などでは大変に致命的であり、危険な方法といわざるをえない。広く無機系やタンニン系のなめしが普及したのはその抗菌性と扱いやすさが寄与している部分も大きいだろう。

サバイバルに応用しやすい古代技術などはインターネットで効率的に調べることが可能になったが、検索上位だけをそのまま飲み込むだけでは不十分なこともある。suvtechを御覧の皆さまには、そこからさらに踏み込んで十分な知識を得てもらいたいと願うところである。

メルクマニュアルで症状と対処を知る

サバイバル時には医療的なサポートが極めて受け難くなることはよく言われているところである。もともと持病がある場合は薬の予備を十分に持っていなければ体調の維持がままならないこともあり、非常時に薬が不足しないように準備しておくことが重要である。

それだけでなく、非常の際には食料・物資の不足から、また災害等による直接・間接的な被害により、栄養失調や外傷、ストレスによる各種症状など、様々な不調に遭遇することが予想される。そういったとき、平時では速やかに医療機関において受診することが一番の対策であるが、非常時にはそういうわけにも行かないことが大半であるので自ら対処する他ない。そういったときに重要なのは知識の有無である。原因の特定と適切な対処が重要であるが、様々な症状とその原因を知っているのといないのでは同じ素人といえども判断の精度が大きく違ってくるものである。

そういったわけで、各種病気や怪我、栄養の欠乏や過剰、中毒症状などを知っておくのがよい。一昔前は家庭用医療百科事典の類を買う必要があったが、現在ではすばらしいものが無料で公開されている。

メルクマニュアル医学百科 家庭版

様々な病気についてかかれてあるが、サバイバル的にはまず応急処置の項を見ていただきたい。それだけでもかなり勉強になるものである。他にも「栄養障害」のセクションと「外傷と中毒」のセクションはサバイバルにかなり有用であると思う。

その他にも軽く目を通しておいて損は無いだろう。かなり分量があり、全てに目を通すのは現実的ではないが、日々の不調を調べて、場合によっては医師に診てもらうことで早めに病気に気づくことが出来れば平時のサバイバル(つまりは健康維持)にも十分に役に立つ。

ネットでの検索やこういった書籍類を調べてばかりで不安になったり、病気を決め付けて受診するのも良いことではないらしいのだが、知識の増強に役立てて病院に行くきっかけにしたり非常時の役に立てたいものである。