非常時にはあらゆるものが不足しうる。食料はその際たるものであり、非常時の栄養源には十分に配慮する必要がある。したがって備蓄などの際には食糧を十分に確保するよう努めるべきであるが、専用の非常用食品ばかりでは気がめいるし、一般家庭でそれらの食品を十分に確保するにはかなりの費用がかかり現実的でない。したがって一般家庭で食べられるものの中で保存性の良いものをある程度買いだめて消費しつつ備蓄を続けるというのがベターな方法である。
備蓄に向く食品は常温で長期の保存が可能なものであるが、その中でも備蓄への向き不向きが存在するから、今後そういった食品を検証しどういった食品を備蓄していくべきか考えて行きたいと思う。
第一弾として今回はポテトチップスを考えたいと思う。ポテトチップスはジャガイモを揚げたものでありスナック菓子の代表的なもののひとつである。こういったスナックは一般的にカロリーが高いと言われるがサバイバルでの栄養源としての性能はどうであろうか。
まず考えるのはカロリーの量である。ポテトチップスは油脂を多く含みグラムあたりのカロリーが高い食品でありカロリーの高さは一般的にもよく言われるところである。手元にあるカルビーのポテトチップス(コンソメ味)は66gで368kcalであった。これはおおよそ5.58kcal/gであり、純粋なたんぱく質と炭水化物のカロリー量の目安4kcal/gを超える。つまり重量比のカロリーで言えば小麦粉などを備えるよりも効率のよい食品ということになる。
栄養バランスの点から言うと、カロリーの高さの要因である脂質の多さが目に付くところである。主にジャガイモと油でできているものであるから、炭水化物、脂質の順で高く、たんぱく質は飛びぬけて少ない。これは長期間これだけを食べて生活することは危険なレベルである。たんぱく質が少ないと運動機能など、かなりの生体機能が衰えることとなりかねない。ただし、脂質の高さは生命維持に有利な面もある。心臓の主なエネルギー源は油脂といわれており、重要な栄養であるからである。したがって単独では良くないが補助的な食品として用いる分にはいいだろう。
備蓄する際にはその容積も問題となってくる。倉庫などに備蓄する際はきにならないかもしれないが、それを非常持ち出し袋などにいれて外に持ち出すときはかさばるものは多く持ち運ぶことが困難である。その観点からいくとポテトチップス(また他の袋入りスナック全般)は効率のよくない食品である。スナック菓子は大抵その食感を出すためにもろくできており、それを保護するために袋は気体が充填され膨らんだ状態で保存される。したがってその重量に比べて著しく大きな体積を持ち、保存状態での容積比のカロリーは必然的に低くなってしまう。
保存性はそこそこあるが、備蓄食品としてはいまいちといったところかもしれない。賞味期限はメーカーや種類によって大きく異なることがあるが、手元のもので4ヶ月であった。油脂の多い食品はその酸化が主な劣化要因であるからしっかりと密閉されていればさほどの劣化はないかもしれないが、酸化した油は食味に大きく影響し、また健康にも悪影響があることがあるから注意したい。
入れ替えに際しても注意しなければならない。ポテトチップスは油脂の多い食品であるから、非常時はともかく十分な栄養が取れている日常生活においてはあまり量を多く取らない方が良い食品でもある。一般的な間食として許容される量で消費・入れ替えできるように多くの量を備蓄することはできないだろう。賞味期限から考えると表示されている期間は4ヶ月であるが、購入までの期間もあるから3ヶ月で入れ替わるようにしたとき、週に1袋食べるとすると、12袋程度が限界である。これはカロリーとしては約4400kcalであり、さほど多くのカロリーは備蓄できない。
総合して考えるとポテトチップスはあまり備蓄用の食品としては効率的なものではないが、その嗜好品としての性質は災害時などに精神的を向上させるためには有用である。スナックとして嫌いでなければ安売りの際に3、4袋ほど買いだめでもしておくのも悪くないだろう。
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