古来からの食料 - 栗(柴栗)

クリの葉と実

日本の栗は縄文人の主食であったそうだ。縄文時代の時代の遺跡から見つかった栗の研究で、すでにその当時から栽培がされていたようである。

栗はその食品としての有用性から、またその成長の早さから日本各地に分布している。栽培されているものはもとより、栽培品種が野生化したもの、そして栽培品種の原種である栗が見ることができる。

野生種で栽培種の原種である栗は、柴栗や山栗と呼ばれる。通常の栗との見分け方は簡単で、柴栗は実が栽培品種より小さい。幅で言えば2分の1程度であり、したがって実の体積および重量は8分の1程度になる。ずいぶんと小さく感じるが、大体のところ栽培品種の原種というのはこのようなものである。

栗と他の木の見分け方は実を見れば分かるといっていいだろう。イガの中に特徴的な形の実が詰まっている。おなじみの栗の形であり、それは野生種であろうと変わらない。

食べ方も加熱をし、皮をとり、渋皮を剥いで食べる、という栽培品種と同じ様な食べ方をする。ただし渋皮はとりにくいようである。

栗はこれといった毒性や薬効がないので主食として利用できる。実自体にも渋みなどがないので常食に適する。

ただし、栗に付く虫は発見し難く、冷凍庫などを利用しない保存の際には加熱と乾燥などで虫を殺しておくことが必要である。

採れる時期はもちろん秋である。秋は栗を代表とした木の実が多く取れるから、調理の手順をしっかり行えるならば食料が得やすい時期である。

食用もされる古代からの虫下し - カヤの実

カヤの葉と実

カヤの実(榧実)は日本で古来から食べられてきた木の実である。カヤは木材として碁盤や将棋盤などに使われる、身の詰った硬く重い木である。木材としては耐久性があり、樹脂を多く含み、色合いがよいとされる。

枝葉および幹には独特の香りがあって、これが虫除けとなることから、蚊遣り木とよばれ、これが転じてカヤとなったといわれ、カヤの木片があると、その周囲に蚊が寄らないといわれることもあるほどである。枝葉を燃やした煙を防虫に使ったりするようだ。

食料としてみると、殻の中の種子を食用とすることができる。カヤはどんぐりや栗などと同じように、秋に実をつける。実は緑の果肉で覆われており、その果肉をまとったまま落ちるものがあるからそれを拾い果肉を割って中の殻付の実を取り出して利用する。

実は、殻付のまま7日間ほど灰汁に漬けて渋抜きをするそうであるが、十分に煎ることができればさほど渋抜きに気を使わなくとも食することができるようである。サバイバルにおいて7日間食べられないより、渋くても食べられるほうが良いから、食料の足りないとき、労力を惜しまねばならぬときは渋抜きは省略してよいだろう。

殻付のまま煎り、殻をはずして食するが、十分に渋抜きされたものは一般に食用されている木の実と同様においしいようである。渋抜きをしていないものは苦味、えぐみが強いので覚悟して食べる必要があるが、カヤの実は油分を多く含むのでそのカロリーは高く、食べられるなら食べない手はないだろう。殻を除いたあとの実25g(おおよそ20粒前後)で160kcalほどあるので500gもあれば活発に活動しても十分なカロリー摂取が計算上では可能だ。

ただし、カヤの実は薬効があり、そう多くは食べないほうが良いかもしれない。

カヤの実、榧実は生薬として知られ、20~30粒ほどを食べると虫下しに効くといわれている。また、食べ過ぎると下痢を起こしたり、痰が多くなるなどの副作用が起こるといわれているので、主とした栄養源としてみることは難しく、栄養補給もできる薬としてみたほうが良いかもしれない。

また、カヤはイチイ科の植物であるが、同じイチイ科のイチイは、種子や葉などの果肉を除いた部分は総じて毒があり危険である。同じ科の植物は似ていることが多く間違えないようにすることが大事だ。見分け方としては実が赤くなるのがイチイである。イチイの実は果肉は食べられるが他は食べられない。食料を採集する場合、確証のない場合は食べないということも大事である。

食料の採集を極限までするべきでない理由

今までに様々なサバイバルに使えると思われる技術や物品を紹介してきた。その中には自然物を収集して活用するものも多くある。が、食料を収集して食べる事に関しては今までほとんど取上げていない。(松くらいであろうか)

それというのも、自然界で食料を収集するというのは大変に危険であるからだ。

一番分かりやすいのはきのこであろうか。食用であるきのことそうでない、毒のあるものとを見分けることが難しい場合が多々ある。また、ある地域では確定的に安全であるものでも、他の地域では毒のある良く似たものがあったりもする。同じ場所だけでサバイバルをできるとは限らないので、そうなると知識と経験のある人でも危険になってくる。

きのこの他にも、木と木の実ではドクウツギ、草ではスイセン、アジサイなどなど、数え切れないほどの毒性植物が存在し、致命的なものが数多くある。

食用のものを覚えておけばよいのかというと、食用にできるものに良く似た毒草なども多く存在し、かなりの知識がないと判別は難しいだろう。

それがゆえに、自然界の植物は気軽に手を出すものではない。特にサバイバル状況に置いては医療機関の手厚い治療も望めないから激しい毒でなくとも命を落とす危険もある。

一方で、人間社会とそのインフラが生きている段階においては、食料があるだろう施設へと調達に行くほうが確実である。したがって、まず第一の選択として人里へ降りる、無事な施設や物資を探すということになる。

そういった事情から食用植物の採集に関してはあまり記述をしてこなかった。だが、どうしても食料をそういった植物から得なければならない場合には、危険を冒してでも食さねばならない。極限で生き抜くための知識として知っておくのであれば、生存の確率を上げるために働くだろう。

このsuvtechでは文明が滅ぶ規模の災害時でもどうにか生きれるような技術を目指しているので、今後はそういったリスクの高い方法についても探っていきたいと思う。