サバイバルでは衣類は大変に重要なものである。衣服は体温の保持に必要不可欠といってよく、また様々な外部からの攻撃を防ぐ防具の役割もはたす。裸で野外にいて長期間無事でいられるのは稀なケースであることを考えれば、忘れがちなことであるが衣服は生存のための基本的な装備の一つといえる。
さて、そんな基本装備である衣服であるが、形ある物体であるから当然のことながら破損の可能性から逃れることは出来ない。鋭いものに引っかかればかぎ裂きを生じるし、経年劣化で糸が弱れば取り付けてあるいろいろなものが取れてしまうということも起こりうる。かぎ裂きなどで穴が開けば防護機能は低下し、風が吹き込み断熱効果は低下する。またボタンやポケットが取れてしまえば道具としての機能も低下することは明らかである。
そういうときに効果を発揮するのが裁縫の技能である。極々簡単な技法でもいいのであるが、基本の縫い方、ボタンのつけ方などを知っておけば、衣類の損傷部分を繕うことが出来るというものである。
また裁縫に手馴れれば修繕だけでなく、リフォームも出来るようになる。カーテンやシャツ、他にも色々な布地を素材としていろいろなものを作り出すことが可能である。手袋、靴下、帽子、コートなど想像力の及ぶ限りの布製のものを形作ることもできるだろう。サバイバル環境を考えると素材となる布が大量に存在する場合は製作するよりも完成品を探した方が早い場合も多いが、荷物の制限される移動時などにはありあわせの物で必要なものを作ることで活動の幅が広がることは確実である。
裁縫の技能自体は、近年では義務教育のカリキュラム内に基礎的な内容が含まれているので、おおよその方が訓練したことがあるだろう。しかしほとんどの方は記憶も薄れているだろうし手縫いでの実践はそれっきりしていないだろうから、一度教本の類を紐解いてみるのもよいかと思う。より効率的な縫い方、頑丈な縫い方の発見があったりするものである。
技術を蓄えるのはスペースも要らないし、重量もない。また針と糸は省スペースで軽量である。最近は針と糸のセットが低価格で手に入るので経済的な負担も少ない。つまるところサバイバルの準備としてはかなりの低コストであるのが裁縫である。そのわりに状況によっては高い効果が見込めるのであるから、少しばかり裁縫の練習をしてみるのもよいのではないだろうか。
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