節目にて、防災の意識を振り返る

3月11日が近くなると、世間は防災や復興の話題でいっぱいになる。もちろん、これは東日本の大震災がその日にあったからだ。日本の防災意識の転換点の一つとなった大災害である。

もう一つ転換点であろうと思われるのは阪神大震災である。私が子供のころに阪神大震災があり、その当時、大変インパクトがあったものである。意識の高い人々はしっかりとその当時から防災対策を進め、また国や自治体などの機関も整備を進めていた。私もしっかりとした意志をもってではないが、災害に対する不安と自分の力のなさに対する不満をくすぶらせていた。私が自覚を持ってサバイバルに傾倒したのは外国の番組(ベアグリルスのサバイバル番組だ)であるが、震災当時の報道等からうけたトラウマ的なショックから来る感情で何が何でも生き残る技術というものに憧れを持ったのではないかと思っている。

しかしながら長いときが経ち、震災を知らない子供たちすらも大きくなり、人々の記憶から薄れ始めていた。もちろん、他にも大きな地震はそれまでにあったが、建築基準や救助等の対策のおかげか被害は限定されており、日本全土の目を覚ますほどではなかった。そこに東日本の震災である。ご存知の通り、地震だけでなく津波によっても大きな被害が発生した。

阪神淡路の震災では地震に対する強固な対策という形で日本が変わったが、東日本大震災では何が変わったのか。私が考えるに、それは人々の意識だ。それまでは、救助機関等の訓練や建物の補強といった、自分のものでない対策でしかなく、個々人の行動指針や個人の装備といった自分自身の準備は一部の防災意識の強い人々だけがしていた。しかし今ではそういった意識の高い人々は増大の一途をたどり、災害対策がムーブメントといえる規模になっているようにも見える。

もしかすると時が経てば記憶が薄れ、意識の高い人は少なくなってしまうかもしれない。しかし、suvtechにまで流れ着いてこられるような皆様方にはそのような心配は無用であろうか。日々、あるいは遠い先にも活躍する場がなくとも、技術と知識を高めておき、万が一のときに正しい道、生存できる方策を示せるものになれるように、ともに学べる場であれるように努力していく所存である。

ナイフで木材を割るバトニングという手法

サバイバルでは焚き火の技術が大事であることは度々話題にしてきたが、その焚き火のためには燃料が不可欠である。それは燃料として製造されたものだけでなく、自然の中では木の枝や幹であったりするし、街中では家具や建材として用いられている木材であったりする。そういった燃料は焚き火で使うにはいささか不都合なものもあり、利用するにはコンディションを整えてやらなければならない。

よくあるのは薪として使おうとする木が太すぎるというものである。太い木はそれ自体の熱容量や表面積の問題があって火がつきにくいという性質があり、焚き火を開始するときには細いものから順にくべるという原則がある。このため太い木は細く割って使用する必要がある。いわゆるところの薪割りである。一般的に薪割りは斧でもって豪快に行うイメージがあり、またそれは実際に正しく効率的なのであるが、しかしながらサバイバルの場では十分な道具が得られるとも限らない。

薪を割るには斧がいいが、しかし斧がないときにはナイフを使って割る方法がある。バトニングとよく言われるこの方法は、ナイフを他の木材で叩き込み、押し込んでいって割るという方法である。どのようなものかは実際に見たほうがわかりやすいだろう。幸いなことに、日本語で解説してくださっている方が居るので参考にしてもらいたい。

この動画でも注意しているが、バトニングはナイフを棒で叩き込むという、いささか乱暴な手法であるのでナイフへの負荷が大きい。ナイフはサバイバルの基本の道具で、貴重なものであるから、失うことのないように気をつけて扱ってほしい。

小さなナイフでも工夫をすれば色々なことが出来る。大きな道具を用意するのも重要だが、知識と技術で不足を乗り切れるようにもしておきたいものである。

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冬に過ごすシェルターを作る

同じようなものの紹介を前年にもやったような気もするのだが、やはり冬のサバイバルの一大関心事は寒さへの対策である。焚き火での暖房やシェルターの構築が生死を分けることとなるため、それらについての知識が重要となることは明らかである。

さて、シェルターを作るといっても各種シートを用意して作るものや、本格的な構造物を作り上げるものなど様々であるが、今回紹介する動画では自然物を使って一人が横になれる程度の簡易的なものである。簡易的ではあるが、防風には十分であり、焚き火を併用すれば十分に寒い冬でも通用するものである。

ここでは柱となる杭を二本、地面に突き刺して立てて梁をそこに渡し、そこに棒を立てかけることで屋根兼壁の骨組みを作っており、そこに落ち葉を積み重ねることで雨も防げる屋根を構築している。床面には落ち葉を敷き詰めてクッションと断熱材としており、冬のシェルターによくある落ち葉を多用したシェルターである。また、壁として葉のついた木の枝(常緑樹なら何でもいける)を重ねて使ったり、もう一方には細い丸太と落ち葉を組み合わせた壁を構築したりしていて、基本的な技巧の組み合わせとして参考になるだろう。

シェルターは一辺が開けており、そのままでは防寒にはさほど効果は発揮しないが、この構造のシェルターは一辺を覆わないため労力の節約になるうえに、適切に焚き火を設置すると焚き火の恩恵を大きく受けられる構造でもある。屋根の部分は焚き火の熱を受け、反射することで内部にあるものを温めるし、屋根の厚い落ち葉の層が蓄熱することで焚き火の熱をある程度平均化して熱線を放出することで内部を温め続ける。焚き火の燃料を集めるのは少し手間だが、暖房効率のいいシェルターとそれに適した暖房装置を構築するよりははるかに楽であろう。

寒さは気力体力をともに奪うため、速やかなシェルターと暖房環境の構築が必要である。一つ一つの作業はさほど技術が必要なものでもないので、基本構造をしっかりと知っておき、万一のときに役立てるようにしておけば寒空の下で途方にくれることもないだろうと思う。

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