サバイバルを考えるときに、短期・中期・長期で備えるものや目を向ける観点が異なってくる。短期ではまずもって脱出と安全確保につきる。中期ではしばらくの行動を可能にする食料や飲料、そしてシェルターの確保が検討の範囲に入ってくるだろう。長期ではそれらが大規模になり、また医薬品や各種の道具について目が行くようになるはずである。そして、それらを超えた超長期を考えるとき、食料や飲料、そして医薬品や衣料品等の生産まで視野に入れることになる。
大規模破局に備えるプレッパーのうちには食料品そのものを確保するだけにとどまらず、その生産方法を確保するものも多く居る。食料の確保をするときに、保存と他の場所からの回収、そして自然からの採集だけでは安定した供給を保つことは難しいからである。太古の昔に食糧生産を開始して文明を大いに発展させた歴史をかんがみるに、食料供給の安定は人間的生活の基礎である。そこで、農業を行う準備をしておくわけであるが、さてその作物は何がよいだろうか。
難しくないもので栄養が豊富なものではトマトなどがあるが、保存方法を確立していなければ季節が限定されてしまうし、芋なども同様である。家庭菜園で広く行われているものはおおよそ野菜であり、長期に保存できるものは少ない。安定したカロリーの供給のためにはやはり穀物の栽培を目指すべきだろう。穀物が人間の食の基本になったのはその保存性の高さによるものである。
穀物は日本では米がメインであるが、大量の水を必要とする。田んぼがあり、水路やため池が無事で利水が出来れば栽培可能であろう。日本の文化にも関係して、かなり身近な植物であるから、簡単にでも学習すれば栽培は(とりあえずは)可能である。しかし、それら受け継がれてきた財産が無事とも限らない。そういったときはより苛酷な場所でも育つものを考えなければならない。例えば麦やそばである。
麦・そばは畑作でよいから、畑を耕し、種をまけば収穫を期待できる。そばは春や夏にまいて2~3ヶ月ほどで、麦は秋ごろにまいて翌年春から初夏に収穫である。しかし、農村に行けばうなるほど見つかるだろう稲の種籾と比べて種が見つかりにくいだろうから、種を備えておく必要がある。
私が実践しているのは麦の栽培である。小さな庭で大麦と小麦、そして燕麦を栽培しており、それぞれ扱いやすさが違うが、非常時にはかゆにしてしまえばさほど作業の必要もなく食することが出来るだろう(味はともかくとして、カロリーが取れるということである)。出来た種子を種籾として確保すればまたこれらの作物は栽培は難しくないが、しかしながら容易であるとも言いがたいから、何度か栽培を経験しておくことも重要である。
農業は文明の基礎である。普段はなんら農業と関係ない人も、少し目を向けて、出来れば実践してみれば、食料への不安をいくらかは退けることが出来るだろうと信じている。