サバイバルやアウトドアのイメージとして欠かせないといっていいくらいの焚き火であるが、その焚き火には煙がつき物である。火を熾せば必ず煙は生ずる。
ガスや燃油、アルコールなど液体や気体を用いる火の場合は煙はないといっていいのであるが、木やその他植物、また炭などの固形燃料を燃やすと、火のないところに煙は立たず、ならぬ、煙の無いところに火は無いと言うかのように煙が出る。
これは、実際に火を焚いてみると結構な問題であるというのがわかる。長時間煙を吸い続けると咳が出たり、その他いろいろな健康の不具合が生ずる。煙でいぶすことで虫がつきにくくなり、また細菌が繁殖しにくくなるという利点もあるが、それゆえに吸い込むと問題が多い。
煙が出る原因はつまるところ木の熱分解にある。木が燃えるときにその成分は熱で分解され、ガス成分と炭と煙の成分に分かれる。ガス成分はメタンだったり一酸化炭素だったりするが、これは燃焼しやすく新鮮な空気があれば燃焼して炎として見られる。炭はいわずもがな。そして、煙の成分であるが、これは冷えて集められるとタールなどと呼ばれる成分で、高温であれば気化するが冷えると液化する。こういった成分が燃焼中にでて、空気中で冷えることで細かな液体の粒となり白く見えるのである。(蒸発した物体が冷えて白く見えるようになる現象は水でよく見られ、湯気と呼ばれるがそれと同じようなことが起きている)
さて、この煙の対策であるが、一番よいのは煙の成分を燃やしてしまうことである。煙の成分のタールは炭素と水素からなるから当然燃焼する。したがってこのタールが燃焼できる環境を整えてやることで煙は劇的に少なくなるのである。
煙を燃焼させる装置については据え置き型の薪ストーブなどではクリーンバーンなどといわれて、触媒や機構などとして措置がされているが、野外ではそのような凝った仕掛けをするわけにもいかない。したがってその場の土や石なんかでどうにかすることになる。
そういったときに登場するのがダコタファイアホール(Dakota Fire Hole)である。ダコタファイヤピット(Dakota Fire Pit)とも呼ばれるが、このやり方はとても簡素である。
2つの穴を地面に並べて掘り、その穴を底の部分でトンネル上につなげるだけなのである。そして、片方の穴で焚き火をすると、煙が少なく火を燃やすことができるのだ。
この構造は火の熱で周囲の土が暖められ、強い上昇気流が生じることで新しい空気が活発に供給される。また、土が熱を溜めているからそこを通る空気は暖められ、燃焼中の燃料を冷やすことが少なくなる。こうして、高温を保ちつつ空気の流入を確保することで煙の燃焼を促し、排出される煙を少なくすることができる。
下の動画は同様の構造で燃焼させているが、後半で水を沸かすのに鍋を直接置いたとたんに煙が大量発生してしまった。これは鍋が直接燃焼中の木に当たり、燃焼前の気化状態の煙成分を冷やしてしまったためである。こうならないように、調理の際には石などで五徳をつくり、直接あたらないように鍋をおく必要がある。