非常食と呼ばれる食料は(その範囲は考え方によって変わるが、災害用品として売り出されている物と考えると)最大限に効力を発揮するシーンはさほど多くは無い。
たいていの場合では家庭に良くある保存の利きやすい食品を利用すれば事足りるし、家屋が無事であれば冷蔵庫の中の食品から利用すればさらに長く補給無しで生活できる。
で、あれば、非常食は何のために必要なのか。非常食の機能から考えてみよう。
非常食は第一に簡便である
災害用非常食とされているものの多くは乾燥食品で、水でもどすものが多い。アルファ化米や乾燥もち、フリーズドライ食品などある。これらは水を加えるだけで食べられる状態になるが、アルファ化米や乾燥もちの類は水でもどしても若干固いことが多く、食味はいまいちのことが多い。
最近では味のバリエーションも増えて、技術の進歩から食感と味も向上してはいるが、やはり固形物の乾燥食品は元のままの味と食感を保つことは難しく、あまり過大な期待を持つことはできない。
また、缶詰も非常食として災害用品などで売られているが、無調理で食べられ頑丈である。しかし、缶詰は重量があり扱いが難しい。(参考:私が備蓄で缶詰を重視「しない」理由)
調理する間も無いくらい大変なときに非常食
それではどういうときにこれらの食品が効力を発揮するのだろうか。これらの食品の設計のされ方を見ると良くわかる。つまるところ、調理の余裕の無い緊急時に食べるというものが非常食なのである。
非常食の場合、調理はせいぜい水を加える程度で、ほぼ無調理で食べられる。何もかもが使用不能になっている状態で食事をするために準備をするものであるからそういう作られ方をしているのである。
大事な食料を損なわないために頑丈である
また、災害用非常食として作られている物は(保存性の向上のためか)たいてい頑丈に作られている。一般の食品はコスト上の問題と開封のしやすさからパッケージはさほど頑丈ではない。たとえば袋入りのスナック菓子は結構日持ちがするが、強く上からたたくと袋がはじけてしまう。これでは手荒に扱ったときに食品がだめになってしまう可能性が高い。
非常食はその点でパッケージが強いことが多くちょっとの衝撃では破損することがない。レトルトパックのようなアルミ張りのプラスチック包装であったりする。また缶詰はそれそのものが頑丈である(ただし、イージープルトップタイプの缶詰は開く部分に衝撃を受けると弱い)
この頑丈さはたとえば非常持ち出し袋に入れたときに手荒に扱っても大丈夫ということであり、自分の命以外に意識を向けることが難しい非常時においてその後の活力の元となる食料を守るために重要なことである。
食料に関する対策の最後の砦
つまるところ、非常食は他の食品が利用できる場合には出番は無い。もっとおいしく栄養が良く価格が安い食品は多くある。保存期間についても、日常で消費し入れ替えられるものであればアドバンテージは少ない。しかしながら、それらが失われるような甚大な被害をこうむったときに、非常食は最後の一手となる。非常用の持ち出し袋に、また住居以外の倒壊しても取り出せるどこかに備えておくことで、非常時の食料不安を払拭し、生存のための活動をすることができるだろう。