日常の危険として、また非常時でも恐ろしいのは火災である。急速に拡大し、一度大きくなれば個人での対処は極めて困難で不可能といってもいい。全てを飲み込み破壊する火災は、人間の命も例外なく飲み込む。火に巻かれてしまっては成す術はない。
基本的に火災への対応は防止と初期消火である。火災防止のために難燃性の建材や延焼防止の構造などが開発され建物の各所に導入されており、また出火の初期に気づくために火災報知機などの感知装置を、初期消火のために消火器などの備えをしていたりするだろう。それらの対策が十分になされていれば、火災の拡大を防止し被害を最小限に食い止めることができるであろう。
それでも不幸にも火災が拡大し、手に負えなくなる場合もあるわけであるが、そういった時にはもはや逃げるしかない。火災から逃げて身を守り、専門家、つまり消防士の助けを得るほかないわけである。そこまでの火災となってしまうと火災対策の種々の物品はすでに最小の被害に食い止めるという役目は果たしていないものの、それでも延焼を食い止め遅らせることは十分にできる。たとえばカーテンなどに引火すると延焼、火災の規模拡大の速度は大幅に上がってしまうが、これが難燃素材であるだけでずいぶんと火災の速度は低下するのである。
火災の速度がいくらかでも低下していれば、内部の人間の脱出する時間もいくらか稼ぐことができる。人命の保護という一大事をこれらの火災対策用品は成し遂げることができるのである。
火災の被害予防の点で難燃性の素材、もっと言えば不燃性のもので家を満たせば安全というわけなのであるが、家具・インテリア等の全てを難燃性の物とすることはかなり難しい。コスト的な問題もあるが、一番の問題は需要が少ないということである。難燃性などの火災対策の素材は種類も少なく、したがってデザイン性も悪くなるためさほど使われない傾向があり、また全ての人が火災対策に興味・関心があるわけではないので、火災への対策がなされた製品はさほど多くないのが現状である。
もちろん年々そういったものへの対策は進んでおり、カーテンなどの火災のときに重要な部分などへは導入が著しく進み、少し気をつけてみれば防火のものを選ぶのは難しくなくなっている。同時に、防炎・難燃の処理がされていないものに、防火処理する薬剤も出ており、自分で対策をすることもできるようになってきている。
防火用の難燃剤はいくつかのメーカーから出されていて、価格や容量など違いがあるが、今メジャーなものはホウ素系の化合物である。ホウ素というとねずみやゴキブリなどの退治につかうホウ酸団子があるが、商品によってはシロアリ防除にもなるとうたっている物もある。難燃剤の成分はともあれ、どれも塗布、浸透させて防火をするもので、プラスチックなどの防火には向かないが、木材や布製品の防火には十分に効果を発揮してくれるはずだ。
火災はどれだけ自分が気をつけていても、延焼や放火などの危険は完全になくすことができないものである。万が一のとき、生命を失わないためにもできる限りの対策はしておきたいものである。
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