サバイバル時には身だしなみなんて気にしている暇はないと思われるが、実のところ剃刀には見た目をよくするための利用法しかないというわけではない。
無論、通常一般に使われる剃刀、髭剃りというものはT字剃刀であり、これは応用範囲の広いものではない。毛を剃ることのみに使用されるように最適化されている。しかしながら、それだけの機能でもサバイバルに有用である。例えば毛の生えているところは虫が入り込んでしまうと発見が難しい。これを除去するには最適な幅の櫛を使うなどして根気よく除去するか、薬剤を使用するかになるが、毛を剃って除去してしまえば一網打尽である。これは頭皮やその他皮膚につくマダニ類、また毛に卵を産む毛じらみなどに効果的な方法である。その昔僧職にあるものが頭髪を剃っていたのは虫による害を避けるためとも言われていた。
また髭を剃ることによる身だしなみの効果も無視はできない。髭面の男よりも整えられた状態の男の方が安心感があり、交渉がうまくいくという場面もあるだろう。無論、強さを強調する場合には髭があったほうがいいし、蛮族めいた風貌も威圧に効果があると思われるが、友好的に接する場合は身だしなみを整えるにこしたことはない。
その一方で、毛を剃るというだけの利用法でない剃刀もある。これは一般的に使われる剃刀ではなく、昔ながらの替刃式剃刀、そして一本の刃物としての性質の強い理容に使われる剃刀である。
まずは、理容師が使う剃刀であるが、これは一振りの刃物のような形状であり、これはナイフ的な使用法が出来る。毛を剃るために極端に鋭くなっているので衝撃のかかる使い方はできないが、医療用のメスのような鋭く切り裂く作業には大変つかいやすいだろう。
そしてよりいろいろなことに流用して使いやすいのが替刃式の剃刀である。その昔は広く使われていたが、最近ではあまり見られなくなったものである。最近一般的な交換式のものは剃刀のT字の頭ごと交換する場合が多いが、ここで紹介するのは剃刀ホルダーと呼ばれる剃刀の刃そのものを交換できるタイプの剃刀である。
この剃刀の刃は両刃式であり、色々な刃物を必要とする用途に使用することが出来るだろう。もちろん前述のように剃刀として利用するために製造されたものであるから衝撃には強いものではないが、替刃は複数枚のパッケージとなっているので例えば鏃(やじり)として利用できるし、木の剣のような棒の横に一直線に取り付けてマクアフティル(macuahuitl)と呼ばれるような武器を作ることも可能だろう。
古い道具というのは単純ゆえに耐久性や流用可能性が高いものが多い。最新のガジェットばかりに目を向けずに、時には温故知新を心がけてみるのもサバイバルの肥やしとなるだろう。
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