変則的なスウェディッシュトーチ

前に調理用としても明かりとしても移動できて便利なスウェディッシュトーチを紹介したが、スウェディッシュトーチはその構造上、一定の太さの丸太が必要とされる。斧がある場合はそういう木を切り出すこともできるのであるが、ナイフしかないような場合や、あってもツールナイフについているような短いのこぎりのみの場合はそういったことは難しい。

こういう場合にスウェディッシュトーチの技術は役立たずかというと、実はそうでもない。スウェディッシュトーチは、つまるところ木の壁で覆われた筒状の燃焼装置として見ることができる。木は可燃性があるが、温度が高くならなければ燃えないし、吹きっさらしだと温度は下がりやすいから、トーチの外部が燃えないことで、他の燃焼器具のように燃えない外壁を保てるのである。

したがって、太い丸太が無くともそれに代わるもので似たようなものを作ることができる。具体的にはある程度の太さの丸枝、もしくは細めの木の幹を束ねて使うというものである。太めの木材を複数本束ねれば、外側が燃えず中が燃えるのに十分な木の厚みが出せるし、それぞれの間にはどうしても隙間ができるからそこから空気が入り、内部が燃えるのに十分である。

これのよいところは、太い丸太を用意するよりも断然労力が少ないし、材料が手に入りやすいところにある。また、どれだけきっちり合わせようとしても、曲がりやそれぞれの大きさの違いで隙間ができるから、本式のスウェディッシュトーチに比べて通気に気を使わなくて良いというところがある。

ただし、この方式のスウェディッシュトーチは木を束ねて作るから、そのためのロープなり針金なりが必要である。可燃性の紐を使うなら水に浸すなりの手当てが必要になる。金属の針金は使い道は色々とあるからいくらか用意しておくのもよいかもしれない。

持ち運びのできる焚き火? - スウェディッシュトーチ

キャンプやサバイバルに欠かせないものといえば火である。ガスやアルコール、ガソリンなどの燃料を使った器具は多くあるが、やはり基本的で、しかも自然の中で燃料が手に入る焚き火こそがサバイバルに重要である。

焚き火は基本的には一度組んでしまい、火をつけるとそこから移動することはできない。これは、焚き火用の器具を使うならば解決できるようなことであるが、そういった焚き火用の道具類はかさばったり重かったりすることがあるし、たまたま道具を持っていないときもあるだろう。焚き火用具は必須のものでないから、無理してまでもっておく必要がないからだ。

また、焚き火は一定時間すると火が全体に回り終わって後は炎を上げずに残された炭が赤く燃えるのみとなるが、明かりを望んで火を焚く場合にはこれは少し都合が悪い。

こういったものに適した木の燃やし方がある。スウェディッシュトーチである。

スウェディッシュといいながら、実際はフィンランド発祥のようであるが、とにもかくにも、寒い地方の火の技術である。冬の飾りつけとしてこのトーチを利用したり、木こりが暖をとったり茶をいれたりするのに使うようだ。

形は丸太を4つに割ってからもう一度合わせた感じである。その際、中心になるところをちょっとだけ削っておく、こうすると丸太の中心に穴の開いたような状態になる。これが、基本の形である。

ここから、割った部分を少し広げて、その間に枯れ草や木の皮などの燃えやすいものと細い枝などの焚きつけをはさみ点火すると丸太は割った割れ目のところから燃え始め、ゆっくりと内側だけ燃え続ける。また、空気が外から中に流れるから、外側は燃えない。

これによって燃焼中のスウェディッシュトーチは外を押さえることで持ち上げることができる。また、内部は軽い酸欠状態となるので、一酸化炭素等の可燃気体が発生し、炎を上げることになる。

このトーチは調理や暖房のみならず、明かりとして大変に優秀で便利に使える。構造的にも面白く、ユニークな燃え方をするから、試せる方はレクリエーションとして試してみてはどうだろうか。

いわゆる非常食はどんなときに必要か

非常食と呼ばれる食料は(その範囲は考え方によって変わるが、災害用品として売り出されている物と考えると)最大限に効力を発揮するシーンはさほど多くは無い。

たいていの場合では家庭に良くある保存の利きやすい食品を利用すれば事足りるし、家屋が無事であれば冷蔵庫の中の食品から利用すればさらに長く補給無しで生活できる。

で、あれば、非常食は何のために必要なのか。非常食の機能から考えてみよう。

非常食は第一に簡便である

災害用非常食とされているものの多くは乾燥食品で、水でもどすものが多い。アルファ化米や乾燥もち、フリーズドライ食品などある。これらは水を加えるだけで食べられる状態になるが、アルファ化米や乾燥もちの類は水でもどしても若干固いことが多く、食味はいまいちのことが多い。

最近では味のバリエーションも増えて、技術の進歩から食感と味も向上してはいるが、やはり固形物の乾燥食品は元のままの味と食感を保つことは難しく、あまり過大な期待を持つことはできない。

また、缶詰も非常食として災害用品などで売られているが、無調理で食べられ頑丈である。しかし、缶詰は重量があり扱いが難しい。(参考:私が備蓄で缶詰を重視「しない」理由

調理する間も無いくらい大変なときに非常食

それではどういうときにこれらの食品が効力を発揮するのだろうか。これらの食品の設計のされ方を見ると良くわかる。つまるところ、調理の余裕の無い緊急時に食べるというものが非常食なのである。

非常食の場合、調理はせいぜい水を加える程度で、ほぼ無調理で食べられる。何もかもが使用不能になっている状態で食事をするために準備をするものであるからそういう作られ方をしているのである。

大事な食料を損なわないために頑丈である

また、災害用非常食として作られている物は(保存性の向上のためか)たいてい頑丈に作られている。一般の食品はコスト上の問題と開封のしやすさからパッケージはさほど頑丈ではない。たとえば袋入りのスナック菓子は結構日持ちがするが、強く上からたたくと袋がはじけてしまう。これでは手荒に扱ったときに食品がだめになってしまう可能性が高い。

非常食はその点でパッケージが強いことが多くちょっとの衝撃では破損することがない。レトルトパックのようなアルミ張りのプラスチック包装であったりする。また缶詰はそれそのものが頑丈である(ただし、イージープルトップタイプの缶詰は開く部分に衝撃を受けると弱い)

この頑丈さはたとえば非常持ち出し袋に入れたときに手荒に扱っても大丈夫ということであり、自分の命以外に意識を向けることが難しい非常時においてその後の活力の元となる食料を守るために重要なことである。

食料に関する対策の最後の砦

つまるところ、非常食は他の食品が利用できる場合には出番は無い。もっとおいしく栄養が良く価格が安い食品は多くある。保存期間についても、日常で消費し入れ替えられるものであればアドバンテージは少ない。しかしながら、それらが失われるような甚大な被害をこうむったときに、非常食は最後の一手となる。非常用の持ち出し袋に、また住居以外の倒壊しても取り出せるどこかに備えておくことで、非常時の食料不安を払拭し、生存のための活動をすることができるだろう。