サバイバルとナイフ

サバイバルにおいてナイフ、というか刃物の存在は重要である。木を削り道具を作るのに必要であるし、そこまでの工作をしなくともロープを切ったり火をおこしたりする際に便利であるし、持っている物資のパッケージを開けたり料理をするシーンもあるかもしれない。刃物というのは現代においてそれぞれの用途専用のものがあふれているがゆえに気づきにくいが、ないと存外に困るものである。

サバイバルでナイフ、というとたいていの人が大きないわゆるサバイバルナイフというものを想像されるかと思う。実際、森林地帯や草原などのど真ん中でのサバイバルであればそういうナイフは、つまるところ鉈のような使い方ができるので重宝する。また、木を切り倒して薪割りをするのにも使ったりするようなのがそういった一般にイメージされるサバイバルのナイフの用途である。一般に、映画などのイメージで、サバイバルナイフで戦うようなものがあるが、ナイフはあまり武器として有用でなくそういった使い方はサバイバリストはほとんどしない。

一方で、そこまでのナイフが無くともサバイバルは可能である。大振りのサバイバルナイフは場合によっては荷物になる、携帯に不便な面もあるために小型のナイフが好まれるシチュエーションもあるのである。小型のスイスアーミーナイフ程度のものがよく使われるように思われる。

しかしながら、こういったナイフは小型大型を問わず日常で持ち歩くのには支障があることもある。都会にあってはこういったものを持っていると没収されることがよくあるそうである。東日本大震災時においても、被災後の瓦礫撤去ボランティアがツールナイフ(7得ナイフの類)を便利使いしていたが、没収されてしまった。防災で自治体が勧める用意品にこういうツールナイフが含まれているにもかかわらず警察は取上げてまわることがあるということを覚えておかなくてはならない。

上記の理由、また航空機などで刃物を携帯できないとき、装備を失ってしまったときなどに災難があっても、知識があれば乗り切ることもできる。缶詰の蓋や鉄板などからナイフを作ることができるし、もっと原始的な石からナイフを作るようなことだって可能なのである。

なんにせよ、サバイバルの基本はその場にあるものを使うことである。生存に適切な行動が取れればナイフを持つことにこだわる必要はない。しかし、ナイフはその生存のための工夫、その道具の工作に使う第一の工具であり、それを持っていることは生存を確立するための時間を大幅に短縮することにつながるのである。

非常用品をどこに置いておくべきか

非常時においての備えを考えたとき、様々な物資や装備を準備するだろう。しかし、これをどこに置くかということは非常に難しい問題である。

非常時に持ち出すようにバックにつめている物資を押入れの奥に入れるなどは論外である。すぐに持ち出せないようだとまとめて持って移動できるようにしている意味はない。一方で非常用のバックに固執して逃げ遅れるのもよくない。非常時にはまず自分の体を持って出ると肝に銘じておかなくてはならない。

が、やはり人間そんなに割り切れるものではないので、住居の建物以外にも物資を置いておくことをお勧めする。たとえば自家用車を持っていれば車の中。家とは別に物置があればその中。簡易の収納庫みたいなのもある。崩れると掘り出せないような場所からは遠い位置にあることが望ましい。

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倉庫も車も用意できないけども庭があるとかであれば、物資を頑丈な容器に入れて土に埋めたっていい。アメリカの話だが、ドラム缶に物資をつめて山の中に埋めて回っている人もいる。マンションでも別個に小さな物置の建物があったりするところはそういうところに置いてもいい。なんにせよ外部にも物資があるという意識があれば、逃げる際にワンテンポ遅れる可能性は少なくなるだろう。

また、本当に最小限のものは常に持ち歩く習慣をつけるとよいだろう。私の場合、小さなポーチにアルミブランケット、浄水剤、ファイヤースチール、アルコール、各種医薬品と氷砂糖を入れて持ち歩いている。簡単であるが、代えのきかない物でありサバイバルに有用なものばかりである。こういうものを常に持ち歩けばどういうときでも、まず身の安全を第一に動くことができるだろう。

サバイバルにおける靴の重要性

災害等に備えるといったときに、まず食料や水が思いつくのであるが、実はサバイバルにおいてそれより重要なものとして、身体を保護する装備がある。今回は様々ある装備品のなかでも身体保護の装備、特に移動に重要な靴について考えたい。

災害に備えるときによく聞くのが「非常持ち出し袋」とかいう類のセットである。このセットはたいてい、今まで述べたサバイバルシートや食料や水等が入っている。また、キャンドルや懐中電灯、ラジオ等が追加で含まれている場合がある。しかし、これにはたいてい靴が含まれていない。想定として、玄関からゆったりとバックを持って逃げるようなことを考えているようにしか思えない。

ちょっと余談になるが、英語で非常持ち出し袋に相当する言葉で「bug out bag」というのがある。 bug out というのは急いで逃げるとかほうほうの体で逃げる的な意味があり、なんとも切羽詰った感じがでている気がする。そこから持ち出し袋を言い換えて、「緊急脱出バック」とかにすれば、もう少し装備のそろえ方が変わってくるんじゃないかなと思う。

ともかく、緊急時に悠長に靴を履いている暇などない。しかも、靴のある建物に戻れるかもわからないし、その場を(たとえば火災などで)すぐに離れなければならない可能性もある。そういったときに、裸足でどれだけ歩けるか考えてみよう。少しの間裸足で移動するくらいなら気をつければ可能かもしれないが、しかし、それでは移動に時間がかかるし、長時間の歩行は困難だと思われる。

非常時において重要なのは、できるだけ怪我をしないということだ。地震等で瓦礫の山になり、砂埃土埃が舞い上がる中怪我をすれば、致命的な感染を起こす可能性もあるし、大きな怪我をしても治療が見込めないことだってある。また、怪我は小規模であっても生存のための活動に支障をきたす。

特に足の裏を怪我すると最悪なのである。とげのひとつ、ガラスのひとかけらを踏んだだけで足の裏は傷つき、移動の速度は大幅に低下する。東日本大震災でみな心に刻んだと思うけれども、災害後の速やかな避難ができないと、命を落とすケースもあるのである。

よって、緊急脱出のときに引っつかんで出て行く荷物に靴を含めておくことは重要だ。ただのスニーカー1足であっても怪我の可能性を大きく減らし、移動速度の低下を防止する。

身を安全な場所に移動するのに必須の足を守る靴は、すなわち命を守る靴なのである。